高齢者の排泄動作への介入の重要性

ADL

今回は、排泄動作への介入の重要性について、

高齢者の特徴や、文献等を交えご紹介したいと思います。

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トイレ動作とは

そもそも「排泄」とは、『不要となった身体の代謝老廃物を便・尿・汗・呼気として体外に排出すること』とされています。

便・尿の排泄は生理的意義だけではなく、精神的・社会的にも重要な意義を持ちます。

トイレ動作とは、便・尿の排泄動作を遂行するために行う一連の起居・移乗動作や上肢操作の全般を指します。

複数の要素から構成されており、それらの要素が単独に行えるだけではなく、一連の動作として円滑に実施できることが必要になります。

そのため、自立までに時間を要することも多いです。

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健常者と高齢者の排尿の違い

尿の生成

【健常者】

1200〜1500cc/日

【高齢者】

1100〜1200cc/日

膀胱の状態

【健常者】

膀胱での蓄尿:300〜500cc

尿意:200〜300cc

【高齢者】

膀胱の萎縮・弾力性の衰え

膀胱支配神経の不安定性・膀胱内圧の異常

骨盤帯の衰え、尿道の狭窄

男女差

【健常者】

尿道の長さ

男性:16〜20cm

女性」3〜4cm

【高齢者】

男性:排出障害が多い

女性:蓄尿障害が多い

1回の尿量

【健常者】

200〜300cc

【高齢者】

100〜150cc

排尿頻度

【健常者】

5〜6回/日

【高齢者】

排尿傾向:8〜10回/日(日中:6〜8回)

夜間多尿傾向:ホルモン分泌の日内変動(就寝時:2〜3回)

尿流率

尿流率:勢いのいい尿が出るかどうかの目安となる数値。尿量にもよるが、1回の排尿時間が30秒程度でれば健康な状態。

1分以上かかる→尿の排出障害の可能性あり

【健常者】

20〜30cc/秒(排尿時間:15〜30秒)

【高齢者】

尿流率の低下:老化や疾患の影響

残尿、尿路感染

(※排泄ケアナビ 参照)

トイレ動作の支援はなぜ重要か?

対象者の視点から

・排泄はそのほかのセルフケア(食事や更衣など)と比較し、一日当たりの実施頻度が多い。

・転倒も多く発生しやすいとの報告あり(回復期病棟での転倒の約8割が病室とトイレで発生)

・セルフケアニーズが最も高いADL動作

・排泄は羞恥心を伴う生活行為であり、自尊心に影響を及ぼしやすい(※排泄ケアナビ 参照)

※林 節也、他著:回復期リハビリテーション病棟における転倒事象の横断研究、日本転倒予防学会誌、Vol.2 No.3 2016

医療者・社会の視点から

・失禁の有無が退院後の予後に影響するとされています。失禁消失群は予後が良好だとされている。

・自宅退院の予測因子として、FIMのトイレ移乗、トイレ動作が予測に適しているとの報告もある。

・排泄は、能力だけではなく自宅復帰率や要介護度の変化といったリハビリの進行にも影響する。

・排泄は対象者の健康と幸福のために重要な生活行為であり、医療者にとっても携わる頻度の多い、重要な生活行為である。

※岡本 信弘、他著:回復期リハビリテーション病院におけるFIMを用いた自宅復帰因子の検討、理学療法科学、第27巻2号

※小林 修二、他著:予後予測因子としての失禁に関する妥当性の検討、理学療法科学、第20巻2号

まとめ

排泄は人の自尊心に関わる非常に重要な生活動作の一つです。

また、上記で紹介したように自宅退院率にも影響してきます。

実際、ご家族から「トイレが1人で行けるようにしてほしい」というデマンドを聞くことは非常に多くありますが、

トイレ動作は移動能力やバランス能力、認知機能など様々な要素が必要になり自立獲得が難渋しやすいのも事実です。

本人にとってどの方法が良いか、どの程度の介助量なら介助者の負担が少ないか、

機能の変化も評価しながら介入出来ると良いと思います。

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