リハビリの効果に影響する要素として、「運動」・「睡眠」・「栄養」の3つが非常に重要だということは、以前から言われていました。
その中でも、近年「栄養」への関心が非常に高まっている傾向にあります。
本記事では、リハビリに関する栄養について解説したいと思います。
リハビリ患者の2人に1人は低栄養?
病院:38.7%、老人ホーム13.8%、在宅5.8%、リハ施設:50.5%
これは施設別の低栄養の高齢者割合です。
リハビリ施設においては2人に1人が低栄養という驚きの結果となっています。
いくら質の高いリハビリや、長時間のリハビリを行なったとしても、
低栄養の状態では、十分な効果は得られないどころか、逆に身体機能が低下してしまう可能性もあります。
「あんなにリハビリ頑張ってるのに全然改善しない」という場合は、
一度栄養状態を見直してみることも重要でしょう。
低栄養の原因
アメリカ栄養士会が発表している低栄養の原因には、以下の3つの分類があります。
急性期疾患に関連した低栄養 ー侵襲ー
急性疾患に罹患すると、食欲が低下し、体重が減少するため、低栄養状態に陥ることがあります。
また、炎症や感染症などが引き起こす代謝の変化によって、栄養素の需要が増加するため、適切な栄養摂取が重要となります。
急性疾患には、心臓発作や脳卒中、外傷などが含まれます。
短期間のCRPを認めれば侵襲を疑って良いでしょう。
慢性疾患に関連する低栄養 ー悪液質ー
慢性疾患には、がん、慢性腎臓病、糖尿病、肝疾患、心不全などが含まれます。
これらの疾患には、食欲不振や消化器官の機能低下などが起こり、栄養摂取が困難になることがあります。
また、これらの疾患には、治療によって栄養素の需要が増加する場合があります。
適切な栄養管理は、疾患の進行を遅らせたり、症状の軽減につながることがあります。
CRP 0.3〜0.5mg/dL以上が3ヶ月続けば悪液質を疑って良いでしょう。
社会生活環境に関連する低栄養 ー飢餓ー
社会生活環境には、貧困、孤独、栄養失調、食事の欠乏などが含まれます。
これらの環境は、栄養素の摂取を困難にし、低栄養状態を引き起こす可能性があります。
つまり、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回ることで低栄養状態になります。
また、高齢者や障害を持つ人々は、社会的な孤立や移動の制限によって、栄養管理が困難になる場合があります。
CRP陰性であれば飢餓を疑って良いでしょう。
これらの原因を理解し、早期に低栄養を予防するためには、適切な栄養摂取と栄養管理が重要です。
また、社会生活環境に関連する低栄養を予防するためには、社会的な支援や関与が必要です。
リハビリ栄養という考え方
リハビリ栄養の定義
リハビリ栄養とは、
「栄養状態も含め国際生活機能分類(ICF)で評価を行ったうえで、障害者や高齢者の機能、活動、参加を最大限発揮できるような栄養管理を行うこと」
と定められています。
リハビリ栄養の目的
リハビリテーション栄養は、疾患や怪我などの障害を持った患者さんが、
適切な栄養管理を通して回復や生活の質の向上を目指す考え方です。
疾患や怪我によって身体的、精神的に損傷を受けた患者さんの栄養状態を改善し、
身体機能や身体能力を回復・維持し、患者さんのQOL(生活の質)を向上させることを目的としています。
他職種の連携が重要
リハビリテーション栄養においては、個々の患者さんに応じた栄養管理計画を策定します。
その際に、患者さんの状態や治療の進行、食事環境や嗜好、社会的背景などを考慮して、
栄養バランスやエネルギー摂取量を調整することが重要です。
また、患者さんが適切な栄養を摂取できるよう、食事の提供方法や食材の選択、栄養補助食品の活用なども考慮されます。
リハビリテーション栄養は、疾患や怪我によって低栄養に陥った患者さんの栄養状態を改善することによって、
患者さんの治療や回復を促進する効果が期待されています。
また、回復後の生活の質の向上にもつながります。
リハビリテーション栄養は、医療チームの一員として、医師や看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士などと連携して、
患者さんの健康とQOLの向上を支援することが求められます。
栄養状態の評価方法
病院での栄養状態の評価には、様々な方法がありますが、一般的には以下のような方法が用いられます。
身体計測
身長、体重、体脂肪率などの測定を行い、BMI(体格指数)や筋肉量などの指標から栄養状態を判断します。
食事摂取量の調査
24時間食事摂取量調査や食事歴の把握などを行い、栄養素の摂取量を評価します。
血液検査
血液中の栄養素やタンパク質の濃度を測定し、栄養状態を評価します。
身体機能の評価
筋力や身体機能の低下、日常生活動作の制限などを評価し、身体機能の低下が栄養状態に影響しているかを判断します。
栄養評価スケール
栄養状態の評価には、
■ MNA(Mini Nutritional Assessment)
■ GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)
■ SGA(Subjective Global Assessment)
などの栄養評価スケールが用いられます。
MNAは高齢者の栄養状態を評価するスケールで、自己報告アンケート形式で簡便に測定できます。
SGAは、医師や看護師が患者の病歴、身体検査、栄養状態、機能状態などを総合的に評価し、患者の栄養状態を評価するスケールです。
GNRIは、身体的な状況と栄養状態の両方を考慮して、高齢者の栄養リスクを評価します。
以上のように、病院での栄養状態の評価には、様々な方法が用いられますが、栄養評価スケールを利用することで、客観的な評価が可能になり、より正確な栄養状態の評価ができるようになります。
参考文献・著書
若林 秀隆:リハビリテーション栄養とサルコペニア.外科と代謝.栄養50巻1号.2016年.2月
まとめ
今回は、病院で起こり得る低栄養について解説しました。
栄養管理は、他職種の密な連携が重要であり、これが非常に難しいと実感しています。
まずは患者の栄養状態に関心を向ける事が、大きな一歩だと思います。
本記事が臨床で奮起する1人でも多くの医療従事者のお役に立てれば幸いです。
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