臨床に出てすぐ、多くのPT・OTがぶつかる壁の一つが**「評価が不安」**という悩み。
特に、
• 「ROMってこれで正しいの?」
• 「MMTの判定、なんとなくでやってしまっている…」
• 「測った数値が実際にどう意味があるのかわからない」
といった声をよく耳にします。
この記事では、**ROM(関節可動域)とMMT(徒手筋力検査)**の基本と、臨床で活用できるコツを、現場視点で詳しく解説します。
そもそもROM・MMTはなぜ必要?
ROM・MMTは、リハビリの出発点となる重要な評価です。
• ROMは「動きの制限がどこにあるか」を可視化し
• MMTは「筋出力の低下や左右差」を明らかにします
ADLの分析や介入方針の決定、目標設定の根拠にも直結します。
ROM(関節可動域)の基本とコツ
🔹 ROM評価の基本
項目 | 内容 |
測定方法 | ゴニオメーター(可動域計)使用 |
評価基準 | JOA(日本整形外科学会)・AAOS基準に準拠 |
測定姿勢 | 解剖学的肢位 or 実用的な臨床肢位 |
測定範囲 | 他動ROM(PROM)、自動ROM(AROM)を分けて記録 |
💡 実践で使えるROMの測定のコツ
1. 「軸」と「移動アーム」の確認を丁寧に
• 解剖学的指標(例:肩関節なら肩峰)を触診で正確に把握
• 移動アームは骨に沿って動かす(例:上腕骨、大腿骨)
🔸ポイント:「なんとなく」で当てずに、毎回同じ部位に正確に当てる習慣をつけること
2. 筋緊張や痛みで動きが出ない時は…
• まず**AROM(自動)**で“本人の動ける範囲”を確認
• 次に**PROM(他動)**で“関節構造的な制限”を確認
• 痛みの有無を聞きながら動かす(例:「このあたりで痛いですか?」)
3. 測定値にばらつきが出るときは?
• 姿勢のブレ、軸のズレが主な原因
• 測定前に骨盤・体幹を安定させることで誤差を減らせます
• 同じセラピストが測ることで、経過観察の信頼性も上がる
4. 実際の介入にどうつなげる?
例:
• 肩屈曲が110° → 更衣や洗髪動作に制限 →「肩関節の可動域拡大」と「代償動作の工夫」がリハの目標に
MMT(徒手筋力検査)の基本とコツ
🔹 MMT評価の基本
評価尺度 | 概要 |
0~5段階 | 5=正常、0=筋収縮なし |
評価対象 | 単関節筋優先で、解剖的走行を意識 |
姿勢 | 重力の影響を考慮(水平位/重力除去位) |
抵抗 | 筋腹の遠位に適切な力で加える |
💡 MMTの臨床でのコツ
1. 評価前に「重力方向」をイメージせよ
• 例:肘屈曲→座位 or 仰臥位で重力に抗して動かす
• 重力に抗して3以上、除去して動ければ2と判断しやすい
2. 抵抗は「一定のスピード・強さ」で
• いきなり強く押すと正確な評価ができない
• 「だんだん強くするように押す」が原則
• 抵抗をかける場所は、骨の遠位1/3を目安
3. MMTグレードの“目安”を体感で覚える
グレード | 動きの状態 | 臨床でのイメージ |
5 | 強い抵抗でも動かない | 健常者レベル |
4 | 抵抗にある程度抗するが押し負ける | ADLに影響なし~軽度 |
3 | 重力に抗して全可動域 | 最低限の機能的動作可 |
2 | 重力除去で可動あり | 水平面での動作可能 |
1 | 筋収縮のみ | 動作にはつながらない |
0 | 収縮も認められない | 完全麻痺 or 経上位損傷 |
4. 「筋力低下の原因」を常に考える
• 神経性?(例:末梢神経損傷、脳卒中)
• 廃用性?(例:長期臥床)
• 痛みによる防御抑制?
• 心因性の影響?
👉 評価結果は“表面”にすぎない。背景まで読むことが大切
評価データを「意味のある情報」に変えるには?
🔸 病態・ADLと関連づけて解釈する
例:
• 大腿四頭筋MMT 3 → 坐位保持○、立位△ → 座位ADL中心での支援が必要
• 肩関節外転ROM 80° → 食事動作に支障 → 食事姿勢の工夫や動作代償を検討
🔸 数字だけにとらわれない「現象としての観察」も重要
• 動作中に代償(肩挙上、体幹回旋)が出ていないか
• 反対側との違い、反応、表情(痛み・不安)なども記録する
新人がやりがちな“評価の落とし穴”
よくあるミス | 解決策 |
姿勢が毎回違う | 測定前に正確に姿勢セット |
軸がずれる | 触診と解剖学を再確認 |
数値にだけ注目 | 動作観察と統合して考える |
MMTの力加減が適当 | 教員や先輩に何度も見てもらう |
記録があいまい | AROM・PROM、左右を明記する習慣を |
まとめ:評価ができる=介入につながる
ROM・MMTの目的は「数字を出すこと」ではなく、
“対象者の生活を理解し、適切な介入に活かすこと”
です。
✅今日からできること
• 測定姿勢・手順をルーチン化する
• 自分の測定を動画や先輩に確認してもらう
• 数字だけでなく、「動作・表情・背景」も評価する
• 結果をADL・目標設定とセットで記録する
🎁 おまけ:新人向けおすすめ練習法
練習内容 | 方法 |
ROMロールプレイ | 同期や学生で交互に評価練習 |
MMTの判定練習 | 3と4の違いを何度も体感する |
解剖マーカー確認 | 骨指標を触って描いてみる |
日々の記録レビュー | 毎日先輩に記録添削してもらう |
▶ 評価に不安がある方は、経験を重ねることが一番の上達法です。焦らず、丁寧に、確実に。
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