【転倒予防】ちょっとした段差や何もない所でつまずく原因と対策を徹底解説!

脳卒中リハビリ

「なんでもない所でつまずくようになった」
「ちょっとした段差でよろけてしまった」

こういった声は、高齢者の方や、病気・ケガからの回復期にある方からよく聞かれます。実際、転倒は高齢者の骨折や寝たきりの大きな原因のひとつでもあり、早期の予防が非常に重要です。

この記事では、作業療法士(リハビリ専門職)の視点から、

  • つまずく主な身体的・環境的要因
  • 日常生活での具体的な対策
    について詳しく解説します。ぜひ、ご自身やご家族の健康管理の参考にしてください。

1. 足がしっかり上がっていない(すり足歩行)

高齢者に多く見られるのが、**歩くときに足を高く上げず、地面をこするように歩く「すり足歩行」**です。これにより、ちょっとした段差やカーペットの端、床のわずかな凹凸に引っかかってしまいます。

原因となる身体的要因:

  • 腸腰筋の筋力低下:股関節を上げる力が弱くなり、足が持ち上がらない。
  • 足関節の可動域制限:足首が十分に動かないと、足が地面から離れにくくなる。
  • 体幹が前屈みの姿勢:加齢や背中の丸まり(円背)によって前傾姿勢が強くなると、骨盤の動きが制限され、足が前に出にくくなります。
  • 歩幅の縮小:歩くテンポや自信の低下で、自然と小さな歩幅になり、引っかかりやすくなります。

2. 足の指の筋力・感覚の低下

足の指は、歩くときや立っているときのバランス調整に非常に大切です。
特に以下のような変化があると、地面の変化に気づかずにつまずきやすくなります

  • 足趾の筋力低下(グー・パーがしづらい)
  • 足底の感覚低下(糖尿病性ニューロパチーなど)
  • 足趾変形や外反母趾による荷重バランスの崩れ

これらは、「感覚と運動の統合」が崩れた状態ともいえます。


3. バランス機能の低下

年齢とともに、三半規管や体幹筋の働きが低下し、体の揺れを素早く修正する力(姿勢反応)が鈍くなります

特に立位中や歩行中に、少しでもバランスを崩したときに、反応が遅れてしまい、そのままつまずいて転倒するリスクが高まります。


4. 視力や注意力の低下

「段差に気づかなかった」「床と壁が同じ色で段差が見えにくかった」といった経験はありませんか?

加齢による白内障・緑内障・加齢黄斑変性などの視力障害や、注意力の低下(特に認知症)も、つまずきの原因となります。
一見「何もない所」に見えても、実際には視覚的に見落とされた段差がある場合も少なくありません。


5. 靴や床環境の問題

滑りやすいスリッパや、サイズの合っていない靴、段差の多い家屋構造なども、外的なリスク要因になります。特に、和室→洋室、畳→フローリングなどの切り替わり部分は要注意です。


✅ 1. 足を上げるためのトレーニング

● その場足踏み運動

その場で左右の膝を交互にゆっくり持ち上げて足踏みします(1日10回×2〜3セット)
→腸腰筋や大腿四頭筋の強化に効果的です。

● 椅子座位での脚上げ体操

椅子に座った状態で、片足ずつゆっくりと持ち上げる運動を行いましょう。


✅ 2. 足指と足底の感覚刺激

● タオルギャザー

足の指でタオルをたぐり寄せる運動。
足趾の巧緻性(器用さ)と筋力を向上させます。

● 足底刺激

ゴルフボールやテニスボールを足の裏でコロコロ転がして、足底の感覚を刺激しましょう。


✅ 3. バランス感覚を鍛える

● 片足立ち(支えありOK)

安全な場所で、壁や手すりを使いながら10秒ずつの片足立ち。左右で行いましょう。
体幹の安定性と足の筋力強化につながります。

● バランスディスクや不安定な床面を活用した体幹訓練

→リハビリ職に相談の上、安全な方法で実施してください。


✅ 4. 姿勢の改善・体幹エクササイズ

  • 前かがみにならないよう、意識的に「背筋を伸ばす」習慣をつける。
  • ストレッチポールや体幹トレーニングで、背中・腹筋を鍛える。
  • 座位で姿勢保持が難しい方は、椅子の高さ調整クッション補助も有効です。

✅ 5. 環境整備と靴選び

  • 家の中の段差には滑り止めテープやスロープを設置
  • 夜間には足元灯・センサーライトで明かりを確保
  • 靴はかかとのある歩きやすいものを選び、スリッパの使用はなるべく控えましょう。

左:体幹が前かがみ → 歩幅が狭く、足が引っかかる
右:体幹が直立 → 歩幅が広く、足がしっかり上がっている

(※以下の画像をご参照ください)


「ちょっとした段差でつまずいた」「何もない所で転びそうになった」
――そんな小さなサインも、身体や環境に何らかの変化が起きている証拠です。

しかし、日々の運動や姿勢意識、そして生活環境の見直しによって、つまずきを予防し、転倒リスクを大きく減らすことが可能です。

もし「最近つまずきやすくなった」と感じる方がいれば、早めにリハビリ専門職へ相談することもおすすめします。

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