肩関節周囲炎(通称:五十肩)は、肩の痛みと可動域制限を主症状とする疾患です。
特に40~60歳代に多く発症し、日常生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。
本記事では、肩関節周囲炎について、原因・病態・経過・リハビリのポイントを詳しく解説します。
★肩関節周囲炎(五十肩)の回復期間とガイドラインに基づく解説
肩関節周囲炎とは?
肩関節周囲炎(frozen shoulder)は、肩関節の滑液包や関節包の炎症によって発症し、痛みと運動制限が生じる疾患です。
英語では「Frozen Shoulder(凍結肩)」とも呼ばれます。
肩の動きが悪くなることで、髪を結ぶ、背中をかく、服を着るなどの日常動作に支障をきたします。
肩関節周囲炎の主な原因
肩関節周囲炎の原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与すると考えられています。
① 加齢による変性
40歳を超えると、肩関節の軟部組織(腱、靭帯、関節包)が劣化しやすくなり、炎症や拘縮を引き起こしやすくなります。
② 肩の使いすぎ・使わなさすぎ
• オーバーユース(使いすぎ):肩を酷使する職業やスポーツ(投球動作など)により、炎症が慢性化する。
• アンダーユース(使わなさすぎ):肩の動きを制限すると、関節包が硬くなり拘縮が進行。
③ 糖尿病や甲状腺疾患との関連
糖尿病患者では、肩関節周囲炎の発症率が高いことが報告されています。血糖コントロール不良が炎症を長引かせる可能性があります。
肩関節周囲炎の病態と経過
肩関節周囲炎は、**「炎症期」「拘縮期」「回復期」**の3段階に分けられます(画像参照)。
① 炎症期(Freezing Stage)
• 特徴:痛みが強く、特に夜間痛が顕著。可動域制限はまだ軽度。
• 痛みの原因:関節包や滑液包の炎症、滑液の分泌低下。
• リハビリのポイント:この時期は無理に動かさず、痛みをコントロールすることが重要。
② 拘縮期(Frozen Stage)
• 特徴:痛みは軽減するが、肩の動きが極端に悪くなる。
• 可動域制限:特に外旋(腕を外に回す動き)が制限される。
• リハビリのポイント:**関節可動域訓練(ROM訓練)**を開始し、徐々に動かしていく。
③ 回復期(Thawing Stage)
• 特徴:徐々に可動域が回復し、日常生活動作が改善。
• リハビリのポイント:ストレッチや筋力トレーニングを継続し、再発を防ぐ。
リハビリテーションのポイント
① 炎症期の対策(痛みが強い時期)
• アイシングや温熱療法で炎症を抑える。
• 痛みが出ない範囲で軽い振り子運動を行う。
• 夜間痛が強い場合は医師の指示のもと鎮痛剤や注射を検討。
② 拘縮期の対策(動きが悪くなる時期)
• ストレッチ(壁歩き運動、棒を使った他動運動など)を行う。
• 関節モビライゼーション(セラピストによる関節の動きを改善する手技)を活用。
• 日常生活の中で積極的に動かすことが重要。
③ 回復期の対策(動きが改善する時期)
• 筋力トレーニング(インナーマッスルの強化)。
• 肩甲骨の可動性を高めるエクササイズ(肩甲骨の上下運動、肩すくめ運動)。
• 姿勢改善(猫背や巻き肩を防ぐ)。
まとめ
✅ 肩関節周囲炎は「炎症期→拘縮期→回復期」の3段階を経る
✅ 炎症期は痛みを抑え、拘縮期は可動域を広げ、回復期は筋力をつけることが重要
✅ 早期リハビリが予後を改善し、長期的な可動域制限を防ぐ
肩の痛みが続く場合は、自己判断せず専門医やセラピストに相談することが大切です。
適切なリハビリで、肩の動きを取り戻しましょう!
コメント