肩の痛みというのは、部活動や仕事・日常生活など多くの場面で悪影響を与えます。
肩の痛みで頭を抱えている方も少なくないのではないでしょうか?
そもそも肩関節というのは、広い可動域がある一方で、解剖学的に非常に不安定な構造となっており、不具合や痛みが生じやすい関節の一つです。
原因として考えられるものはいくつかありますが、肩の前が痛い場合には上腕二頭筋長頭腱炎が考えられます。
上腕二頭筋長頭腱炎とは?
上腕二頭筋長頭腱炎とは、上腕二頭筋筋長頭腱あるいはその周辺を取り巻く腱鞘の炎症性病変のことです。
簡単に言うと、上腕二頭筋(力こぶの筋肉)の腱鞘炎です。
症状としては、肩関節の前方に、運動時痛・圧痛が生じます。
評価方法
●Speed(スピード)テスト
肘を伸ばし、手のひらを上に向けた状態で、抵抗下に腕を前方挙上させると肩前方に痛みが誘発されます。
●Yargason(ヤーガソンテスト)
肘を90°曲げた状態で、抵抗下で手のひらを上に向けると肩前方に痛みが誘発されます。
原因
上腕二頭筋は、肩関節前方で長頭腱と短頭腱に別れます。
その中でも、長頭腱は上腕骨の結節間溝と呼ばれる溝の中を通ります。
通常、この溝の中をスムーズに滑ることで肩や肘が動いていますが、肩甲骨と上腕骨のバランスが悪くなったり(アライメント不良)、上腕二頭筋が過剰に働きすぎる(過活動)ことで、擦れて炎症が生じます。
●アライメント不良
肩甲骨–上腕骨のアライメント不良が生じると、本来の正しい位置での腱の滑走が行えず、腱が擦れやすくなります。
アライメント不良の原因は複数考えられますが、骨折、脳卒中後遺症による運動麻痺、姿勢不良などが考えられます。
●上腕二頭筋の過活動
上腕二頭筋は腕を上げたり肘を曲げたりする時に使います。
反復して肩や肘を動かすようなスポーツを行っていたり(野球・バレー・テニスなど)、筋力に見合わない重量の物を持ち上げたりすることで、腱にストレスがかかり炎症が生じます。
上腕二頭筋は腕を動かす筋肉の中でも大きく、力が入りやすい筋肉のため、比較的簡単に過活動を起こします。
肩周りのインナーマッスルが弱い方は特に注意が必要です。
治療
基本的な治療としては、局所の安静と炎症鎮痛薬の処方が主です。
しかし、上腕二頭筋長頭筋腱炎が生じた原因を対処しないことには、再発する可能性が非常に高いです。
上記で挙げたような、アライメント不良、筋の過活動が原因の場合は、それぞれに応じた機能訓練(理学療法・作業療法)が必要になるでしょう。
治療が難化した場合、腱を除圧する手術が必要になるため、悪化する前にまずは病院の受診をお勧めします。
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