【現役作業療法士が解説】インピンジメント症候群の病体と原因

肩関節

肩に運動時痛が生じている場合、原因として考えられるのは大きく分けて①インピンジメント、②筋の収縮時痛、③軟部組織の伸長痛 の3つが挙げられます。

本記事では、その中でもインピンジメント症候群について解説したいと思います。

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インピンジメント症候群とは?

インピンジメントとは、日本語で「衝突」という意味です。

インピンジメント症候群とは、肩を挙げる時や下げる時に、一定の角度で痛みが生じ、それ以上挙げることが出来なくなることの総称的診断名のことです。

そのままにしておくと、腱板断裂を引き起こす一因であると考えられています。

五十肩と間違えやすいですが、五十肩と違う点は「関節の拘縮」が起きることが少ない、つまり関節自体が固まり全く動かないという訳ではないということです。

インピンジメント症候群には、肩峰下インピンジメント関節内インピンジメント(インターナルインピンジメント)の2つがあります。

肩峰下インピンジメント

肩関節挙上運動時に、肩峰下関節において腱板や滑液包、上腕二頭筋長頭腱が烏口肩峰アーチと上腕骨の間で強く挟まりったり、摩擦が生じることで、痛みを引き起こします。

【特徴】

主に肩関節の挙上運動時(手を前から上に挙げる運動)に生じる痛み。

部位としては、肩峰下〜上腕近位に痛みを生じることが特徴です。

また、有痛孤徴候(painful arc sign)と呼ばれる、挙上60°〜120°程の範囲で痛みを生じ、120°を超えると痛みが消失することが特徴です。

肩関節屈曲した場合には小結節が、外転した場合には大結節がそれぞれ烏口肩峰アーチと接触し、痛みを生じる原因となります。

【原因】

骨折による肩甲骨・上腕骨の変形

 肩甲骨や上腕骨近位の骨折により、肩甲上腕関節のアライメント不良がおき、痛みが生じます。

手術後などは、多少なりとも骨形態が変化するため、その僅かなズレがインピンジメントを起こす一因となります。

骨棘の形成

 骨棘とは、関節面の軟骨が変形し、骨化して「骨のトゲ」のようになったものです。

この骨棘が肩棘や上腕骨に形成され(ほとんどの場合が肩峰に形成される)、運動時にインピンジメントがおき痛みを生じます。

骨棘の形成は、高齢者に多くみられます。

肩峰下滑液包の肥厚

 肩峰下滑液包とは、腱板と肩峰との間にあり腱板をスムーズに動かすための軟部組織です。

その肩峰下滑液包が、肩関節のアライメント不良や姿勢不良、腱板の機能不全により歪みが生じ、炎症が起きることで肥厚する場合があります。

本来、腱板と肩峰の滑走材である肩峰下滑液包が肥厚することで、肩を挙上する際に上腕骨頭と肩峰に挟まれ(インピンジメント)、疼痛が生じます。

筋・靭帯・関節包の伸長性低下

 上肢を挙上する際、上腕骨は肩甲骨に対して外旋しながら挙上することで、肩峰と上腕骨頭の間に一定の間隔を保っています。

肩関節内旋筋群(大胸筋・広背筋・大円筋・肩甲下筋)や、肩関節外旋を抑制する靭帯(鳥口上腕靭帯・上関節上腕靭帯)の伸長性が低下することで、上腕骨の外旋が制限され、肩峰と上腕骨頭間の圧が高くなります。

その結果、肩峰下インピンジメントが生じやすくなります。

腱板機能の低下

 前述した通り、肩峰と上腕骨頭の間には一定の間隔があります。

上肢挙上時、上腕骨が肩峰に近づきすぎないように作用している筋(棘下筋・肩甲下筋)の機能不全が起きることで、上腕骨頭の上方変位が引き起こされます。

また、上腕骨頭の上方変位に働く三角筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋などの過活動や筋緊張増加が生じることでも、上方変位を引き起こされます。

 

関節内インピンジメント(インターナルインピンジメント)

肩関節挙上時に、腱板が上腕骨頭と関節唇(関節窩縁)の間で挟まれる現象のことです。

肩甲上腕関節内でインピンジメントがおきることから、“関節内”インピンジメントと呼ばれます。

投球動作(コッキング期)や、水泳のクロールやバタフライなど、繰り返し運動を行うことで上記の現象が起こり、痛みが生じることも多く、野球肩水泳肩とも呼ばれます。

【特徴】

肩関節の挙上・内外旋運動にて痛みが生じます。

部位としては、挙上・外旋運動であれば肩関節後方、内旋であれば前方に痛みが生じることが多いです。

【原因】

肩甲骨ー上腕骨の運動アライメント不良

 肩甲骨と上腕骨は、協調的に運動を行っていますが、肩甲骨に付随する筋肉の柔軟性低下・機能不全がおこることで、上腕骨運動が相対的に大きくなります。

その結果、関節窩と上腕骨頭にて軟部組織のインピンジメントが生じやすくなります。

例)僧帽筋・前鋸筋の筋力低下により、肩関節挙上運動時の肩甲骨上方回旋が十分に行われず、インピンジメントが生じる

例)小胸筋・肩甲挙筋・こうはいきんの伸長性低下・筋緊張増加により、肩甲骨上方回旋がおきない。または、下方回旋することでインピンジメントが生じる。

関節靭帯の弛緩、不安定性

肩関節外旋運動(投球動作など)を反復して行うことで、下関節上腕靭帯の前部繊維が緩み、インピンジメントが生じる。

評価方法

Neer test(ニアーテスト)

肩甲骨を他動的に固定した状態で、上肢を外転させます。

この際、疼痛やクリックサインが生じた場合、陽性となります。

Hawkins test(ホーキンステスト)

肘関節90°屈曲位で、肩関節90°外転させます。

ここから、患者の上肢に内旋強制を加え、疼痛やクリックサインが生じた場合、陽性となります。

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