脳卒中後の肩の痛みを解説〜種類とリハビリアプローチ〜

脳卒中リハビリ

本記事では、脳卒中後に生じる肩の痛みについて、

痛みの種類とリハビリアプローチについて解説したいと思います。

脳卒中の解説はコチラ↓

脳卒中ってどういう病気?病態と原因

痛みの種類とアプローチ

① インピンジメント

肩峰下で腱板や滑液包、上腕二頭筋腱が強く挟まったり、摩擦が生じることで痛みを引き起こします。

上肢挙上では、有痛弧徴候と呼ばれる挙上60°〜120°程の範囲内で痛みが生じやすいです。

また、投球動作などの肩関節外旋運動でも痛みが生じる場合もあります。

詳しい解説はコチラ→インピンジメント症候群の病態と原因

【特徴】

どこが痛むか聞くと、「ここ」とピンポイントで痛い部位を指すことが多いです。

健常者では、肩関節屈曲時に小結節が肩峰下・関節包内にもぐりこむことが触診できますが、

インピンジメントではこれが阻害されていることを多いです。

【アプローチ】

上肢挙上時の、肩関節外旋運動を促す。

その際、上腕二頭筋・上腕三頭筋のアライメントを整えつつ、肘の選択的活動を引き出す必要がある。

② 伸張痛

肩関節運動時に、肩甲骨〜上腕骨に付着している筋(腋窩筋群)の伸縮性が阻害され、

筋にストレッチがかかることで疼痛が生じます。

【特徴】

上肢挙上時に、三角筋後部繊維周辺(三角筋後部繊維〜円筋群・広背筋・上腕三頭筋の隣接部)を指すことが多い。

肩甲骨ー上腕骨のアライメント不良、フォースカップル作用が破綻していることを多く認める。

【アプローチ】

腋窩筋群の伸縮性の再獲得を図る。

この際、肩甲骨を正しい位置にセッティングした上で固定し、関節運動・腋窩筋群の伸縮を誘導していく。

また、三角筋後部・円筋群・上腕三頭筋は筋膜の滑走も阻害されていることが多く、

併せて筋膜の滑走に対するアプローチも行うと良い。

③ 神経の圧迫

ここでいう神経とは、「腋窩神経」を指します。

腋窩神経は、上方を小円筋、下方を大円筋、内側を上腕三頭筋長頭、外側を上腕骨で形成されている後方四角腔(QLS)を走行しています。

このQLSを形成している筋の機能低下・柔軟性低下や、三角筋自体の過緊張が生じると、腋窩神経の絞扼が生じ疼痛が出現します。

【特徴】

上肢挙上にて、三角筋全体を手で覆うように痛みを表現することが多い

【アプローチ】

①三角筋の筋緊張の抑制、伸縮性の再獲得を図る。(若干の牽引も必要)

②小円筋・大円筋の適度な促通・筋緊張の抑制

③上肢挙上時の肩関節外旋運動の獲得

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④ 夜間痛

就寝時に生じる目が覚めるほどの痛みのこと。

肩峰滑液包や腱板の炎症、これらの癒着・瘢痕組織が原因で、肩峰下圧が上昇し痛みが生じるとされている。

肩関節の随意運動は可能だが、無意識下では弛緩状態であることが多い。

そのため、睡眠時の体幹運動に連動した肩甲帯・肩関節の動きが乏しい。

【特徴】

睡眠がとれないほどの痛みを訴え、鎮痛剤も効かないとの訴えも多い。

【アプローチ】

根本的なアプローチとしては、腹内側系と言われる自律的な体幹〜上肢の反応を促通する。

また、対処療法としては、睡眠時(無意識下)の肩関節周囲の低緊張による、持続的な肩甲帯のアライメント不良に対し、タオルなどでのポジショニングも必要になる。

⑤ 視床痛

視床知覚中枢を中心とする脳血管障害後に出現する、昼夜を問わない痛みのこと。

有痛部の皮膚温低下オピオイド鎮痛薬が効かない微小刺激により痛みが誘発される

という3つの特徴を持つ。

【特徴】

年数が経つごとに痛みが強くなる傾向にある。

特効薬がないため、治療に難渋することが多い。

【アプローチ】

上肢の「長さ・太さ・手の大きさ」等の感覚ー知覚の情報を提供する

中枢部〜上肢・手のスキーマを向上させる(温タオルで上肢を包み、圧迫感を加えながら位置をずらす)。

物理療法としては、スーパーライザーによる星状神経節へのレーザー照射が検討される。

この際、睡眠中や睡眠直後などの副交感神経が優位な状態に行うことが適しているとされている。

まとめ

脳卒中後の肩の痛みといっても、様々な原因が考えられます。

患者さんの痛みの訴え方、誘発パターンを理解することが非常に重要かと思います。

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