食事はQOLに非常に影響する行為の一つであり、PT・OT・STが包括的に介入する必要があるADL動作の一つでもあります。
食形態、食事姿勢、道具、栄養など…
今回は、その中でもPT・OTが知っておくべき「食事姿勢」について解説したいと思います。
なぜ食事姿勢が大切なのか
① 一人一人に合った嚥下しやすく誤嚥しにくい姿勢をとることで、誤嚥リスクの軽減につながる
② 楽な姿勢で捕食動作が行えるため、自力接種への獲得につながる
食事姿勢 ー座位・車椅子ー
座位・車椅子座位での食事姿勢のポイントです。
足底はしっかりと床に設置するようにします。
小柄な方で、床に届かない場合の方には、段ボールなどの空き箱を置き、高さの調整をしましょう。
足底が浮いた状態だと、体幹が安定せず、下肢や腹筋に余計な緊張を与え、食事に集中できなくなることがあります。
たまに机の高さが胸より上の高さのまま食事がセッティングされていることがありますが、
胸以上の高さになると、食器の中の食材が見えにくくなり、何を食べているか分からず、食べ残しが多くなります。
また、目線が上がることで、顎が上がり誤嚥しやすい姿勢にもなります。
耐久性の低下や麻痺で、姿勢が左右に崩れる方には、クッションなどを挟んで調整や、
オーバーテーブルやアウトカットテーブルなどを使用し、肘をテーブルの上に置いて固定する方法もあります。
食事姿勢 ーベッド上ー
ベッド上での食事姿勢のポイントです。
ベッド上で食事を摂っている方で、体がずり落ちてしまい、自力摂取に苦戦されている方をよくみます。
椅子や車椅子に比べ、ベッドは自力での姿勢調整が難しい傾向にあるため、食事をセッテイングする際には、必ず姿勢も調整するようにしましょう。
また、ベッド上でテーブルを使って食事をする場合は、左右の柵を外してテーブルを差し込む必要があります。
柵をしたままテーブルを使用すると、食器が顔と同じぐらいの高さに来てしまうため、非常に食事が取りにくくなります。
姿勢不良による疲労は最小限に抑えるよう心がけましょう。
食事姿勢に必要な解剖学的知識
次に、食事姿勢に必要な解剖学的知識を解説します。
体幹角度調整
食道と気管の位置関係から、解剖学的に一番誤嚥リスクが低い体幹角度はギャッジ30°です。
寝た状態だと余計誤嚥しやすそうと感じるかもしれませんが、
舌の麻痺などで食物を口腔から咽頭へ送り込みにくい方や嚥下反射遅延・タイミングのずれがある方は、
体幹角度を下げる→口腔内の角度を下げることで、食道への送り込みを補う必要があります。
座位(体幹90°)の状態だと、食道に送り込むまでに重力に逆らいながら上り坂を乗り越える必要があるためです。
そのため、嚥下訓練の原則として、まずギャッジ30°から開始し、経過をみながら45°→60°座位へと姿勢upしていきます。
頸部前屈の必要性
次に、頸部前屈の必要性についてです。
上記でも説明したように、解剖学的にみると気管が前、食道が後ろの位置関係になっています。
そのため、ギャッジを下げただけでは、口から流れ込んだものが直線上で気管にも入りやすい状態になっています。
さらに頸部後屈になると、救急時の「気道確保」の状態なので、より誤嚥しやすい条件になってしまいます。
そのため、枕やクッションを用いて、頸部前屈位にする必要があります。
目安は約7cm、指4本分程度です。
頸部前屈位になることで、気管への流入を防ぎ食道に入りやすくなります。
舌骨筋群と姿勢
次に、舌骨筋と姿勢の関係性について解説します。
舌骨筋は嚥下筋群の一つで、舌骨上筋群と舌骨下筋群に分けられます。
喉に手を当てて唾を飲み込んで下さい。この時、舌骨が上に持ち上がることが分かると思います。
この動作を行うのが舌骨上筋群と舌骨下筋群です。
何もしない時は、拮抗して舌骨の位置を保っていますが、飲み込むときに上筋群が収縮して、下筋群は弛緩する必要があります。
しかし、臥床時間が長く頭頸部・肩甲帯が伸展位になっている方は、舌骨下筋群(特に肩甲舌骨筋)の伸張性が低下し「ごっくん」と上に持ち上げにくくなってしまいます。
PT・OTの役割
・食事姿勢の評価
病状・身体機能は変化していきます。
一度評価して終わりではなく、定期的に評価し適宜調整する必要があります。
・ポジショニング
姿勢不良は誤嚥リスクの増加や、余計な体力消耗、食事摂取量の減少など、様々な要素に影響します。
クッションやタオルなどを使用し、適切な姿勢を保持しながら食事が摂取できるようポジショニングしましょう。
セラピストがポジショニングを提案しても、次の日見てみると意外と全然その通りなっていないことも多々あります。
他職種との連携もしっかり行うようにしましょう。
・道具の選定
現在、食事の自助具は様々なものがあります。
箸、スプーン・フォーク・グリップ・皿・万能カフetc…
一発で完璧に選定するというのは中々難しいと思います。
評価・調整を繰り返し、対象者が楽に食事を摂取出来る道具を選日ましょう。
万能カフの選定に関しての記事はコチラ↓
・頸部、肩甲帯のリラクゼーション・ストレッチ
上記で説明したように、頸部・肩甲骨には嚥下筋群である舌骨筋が付着しています。
STの専門分野である嚥下機能に関しては中々介入しづらいと思いますが、
頸部・肩甲体周囲筋の柔軟性・伸長性は確保するようPT・OTでも介入するようにしましょう。
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