高齢者における活動量の低下と認知機能低下の関係

脳卒中リハビリ

高齢者の生活において、身体の活動力の低下認知機能の低下は密接に関係しています。

活動量が減ると認知機能が低下しやすくなり、逆に認知機能が低下すると身体活動も減少する、という悪循環に陥ることが多いのです。

本記事では、高齢者の活動力の低下が認知機能に与える影響や、その予防・改善策について解説します。

高齢者の活動量が低下する原因はさまざまですが、主な要因として以下のようなものが挙げられます。

加齢に伴う身体機能の低下

加齢により筋力や持久力が低下し、特に下肢の筋力が衰えることで歩行が不安定になります。

その結果、転倒のリスクが高まり、運動を控えるようになることが多いです。

慢性疾患の影響

高血圧、糖尿病、心疾患、関節疾患などの慢性疾患を抱えていると、体を動かす機会が減り、

結果として活動量が低下します。

また、痛みや息切れが運動への意欲を削ぐこともあります。

社会的な要因

高齢になると、仕事を引退したり、友人や家族との交流が減ったりすることで、外出機会が減ります。

また、家族の介護を受けることで「動かなくても生活できる」環境になり、

活動量が減ることもあります。

精神的要因

うつ病や不安障害などの精神的な問題を抱えると、活動意欲が低下し、結果的に身体の活動量も減少します。

特に、配偶者の死などの喪失体験が活動力の低下につながることがあります。

活動力が低下すると、認知機能にも影響を与えることが研究で明らかになっています。

その主な理由として、以下の3点が挙げられます。

運動不足による脳の萎縮

運動は脳の血流を促進し、神経細胞の活性化を助ける重要な役割を果たしています。

特に、ウォーキングやダンスなどの有酸素運動は、記憶を司る海馬の萎縮を防ぐことが分かっています。

活動量が減ると、脳への刺激が減り、認知機能が低下しやすくなります。

社会的交流の減少

活動量が減ると、外出機会が減り、他者との交流が少なくなります。

人との会話や社会活動は、脳に多くの刺激を与えるため、認知症予防に効果的です。

しかし、活動力が低下することで孤立し、認知機能の低下を加速させる可能性があります。

うつ症状の悪化

活動力の低下は、うつ状態の引き金になることがあります。

うつ病の高齢者は認知機能が低下しやすいことが知られており、特に意欲の低下や注意力の低下が目立ちます。

高齢者の活動力低下を防ぎ、認知機能の低下を予防するためには、日常的な取り組みが重要です。

以下の対策を意識することで、健康的な生活を維持しやすくなります。

適度な運動を習慣化する

運動は、身体機能の維持だけでなく、認知機能の維持にも効果的です。特に以下のような運動が推奨されます。

ウォーキング:毎日30分程度の散歩を習慣にする。

筋力トレーニング:スクワットやかかと上げ運動で下肢筋力を鍛える。

趣味を活かした運動:ダンスや太極拳など、楽しみながらできる運動を取り入れる。

社会参加を促す

高齢者が社会とのつながりを持ち続けることは、認知機能低下の予防に役立ちます。

• 地域のサークルやボランティア活動に参加する

• 家族や友人と定期的に交流する

• デイサービスや訪問リハビリを利用する

★外出の機会や、来客の予定など、とにかく社会と交流することが重要です。

バランスの取れた食事を摂る

栄養不足は身体機能・認知機能の低下を招きます。

特に、DHAやEPAを含む魚、ビタミンB群を含む食品は脳機能を維持するのに有効です。

• 魚(サバ、サンマ、イワシなど)

• 緑黄色野菜(ブロッコリー、ホウレンソウ、ニンジン)

• 大豆製品(納豆、豆腐)

睡眠の質を改善する

睡眠不足は認知機能低下のリスクを高めます。良質な睡眠を確保するためには、以下のポイントを意識しましょう。

• 就寝・起床時間を一定にする

• 夕方以降のカフェイン摂取を控える

• 日中に適度な運動をする

認知機能を刺激する活動を行う

脳を活性化させるためには、日常的に認知機能を刺激する活動を取り入れることが大切です。

読書やパズル:本を読んだりクロスワードを解いたりする

楽器演奏や手作業:ピアノ、編み物、折り紙など手先を使う趣味を持つ

新しいことに挑戦する:新しい趣味を始めたり、新しい場所へ行ったりする

高齢者の活動力低下は、認知機能の低下と深い関係があります。

運動不足や社会的孤立、栄養不足などが影響し、脳の働きを低下させるリスクがあります。

しかし、適度な運動、社会参加、バランスの取れた食事、良質な睡眠、認知機能を刺激する活動を取り入れることで、この悪循環を防ぐことが可能です。

「歳だから仕方ない」と考えず、できることから少しずつ始めることが重要です。

家族や地域社会と協力しながら、健康で充実した高齢期を送るための工夫をしていきましょう。

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